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そのイケメンが突如。美晴に話しかけてきた。
「あれ、一緒じゃん」
しかし美晴は彼の顔面以上に、その右手がもつ参考書に釘付けだ。
思わず飛び跳ねるように立ち上がり、
「それ第2版じゃん! うらやましすぎ!」
と、叫んだ。
蒼佑が持っている参考書の第2版は、美晴が受験を目指す高校には最適とまで言われた問題集だ。局所的に人気過ぎて、品薄で手に入らない。
すると蒼佑が、ニヤリ、と笑う。
「じゃあ、交換してあげる。俺、もうボーダー超えてるし」
「は!? うそ、いいの!」
「うん。これ兄貴のだから、タダだし」
そうして手に入った参考書を手に帰宅してから、美晴はふと『なんで急に話しかけてきたんだ』と冷静になった。
美晴は同世代との恋については、あまり期待しないことにしている。
中学1年生の頃に付き合ったアホが、見事に年上の先輩と二股をかけてくれたからだ。
だからもう2年は彼氏がいないし、そもそも恋についてよく分かってもいない。
そんな美晴の日常に、蒼佑は奇妙なほど突然現れて、急激に食い込んできた。
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