火曜日のキッシュ

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 次に美晴が蒼佑の店を訪れたのは、友人である真琴の誘いがきっかけだった。  ぱやぱやとした茶髪の真琴は、男子と女子の中間点を、大学生という年齢ながら反復横跳びしているような、女子だ。ボーイッシュという単語が似つかわしくない、と美晴は思っている。真琴のそれはファッションではなく、天性の才覚だからだと感じているから。  もう2ヵ月も過ぎたのか、と思いながら美晴は店へ入る。店主は、蒼佑は、相も変わらずあの涼やかなイケメンぶりで、だけど美晴の顔も分からないような様子に見えた。  さすがに既読もつかない無視状態では、美晴もあれこれ、考えてしまう。  彼は美晴を、どう思っていたのだろう。  決めようがない感情を抱きつつランチを注文し、到着した青い皿を見て、美晴は驚愕した。   「キッシュがある……」 「そーなの! ここのキッシュ美味しいんだ! でも、人気過ぎて、週に一回しかランチにしかつかないの」  目を輝かせる真琴は、フォークの先でキッシュのほうれん草とクリームを絡めるように持ち上げて、口に運ぶ。美味しい、と呟いてから、今度はパンを一口大にちぎって、ソースに絡めるようにつけた。
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