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美晴は目の前にしたキッシュを眺める。ランチにキッシュが付く日が週に一度だと真琴が知ったのは、この店に通っているからだろうか。
「……どこかに書いてあった?」
「え? あ、キッシュの出る曜日のこと? うん、ネットのお店のインスタに投稿されるんだ。毎週何曜日にキッシュが出ます、って。私も来たらなくってさ、残念がってたらお店の人が教えてくれたんだ。頭いいよねー! キッシュ出る日だって分かったら来る人もいれば、混んでるから避けようって考える人もいるもんねー。あ、美晴も食べなよこのパン、クルミたっぷりで美味しいよ」
「……よかったら真琴、食べる?」
キッシュのお皿を美晴は持ち上げる。驚いた顔で真琴が顎を小さく引く。首周りの肉に皺がよった。
「えぇ!? いやいや、美味しいから食べなよ!」
「ううん。その、ほ、ほうれん草が苦手で」
「ああー……うーん。本当にいいの?」
「うん。食べて、私、真琴が食べてる姿、好きなんだ」
別に好きじゃなかった。偶然が重なっただけだった。
分かっていても美晴には、このキッシュを食べる覚悟ができなかった。
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