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とりあえずキッシュにフォークを突き立てて、口へ運ぶ。
やっぱり豚のテリーヌのほうが美晴には口に合ったけれど、運命が回りだしてしまったのだからもう仕方ない。
本当に仕方ないだろうか。
「……あー、うん。とりあえずさ」
美晴は手を差し出した。
「あたし、美晴。よろしくね」
この関係に名前を付けるのは癪に障るが、お前が望むならそうしてやろうと美晴は思う。
想いを込めた片手に、蒼佑が泣きそうに、だけど、嬉しそうに笑ったから。
つぶれた豚のテリーヌを、美晴は許すことにしたのだ。
おわり
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