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このランチについてくるキッシュが美味しいと聞いたのに。
少なくない落胆を無理やり口へ押し込めるように、美晴はフォークに豚肉のパテを突き刺して口に運んだ。
いや、美味しい。こちらのほうが美晴は好きかもしれない。
それでも心にとげが刺さったような感覚があるのは、彼の笑顔のせいだったかもしれない。
「じゃあ次の火曜日に来なよ。キッシュ、その日に出すからさ」
そう言って笑った男は、キッチンの奥でせわしなく働いている。
蒼佑と美晴が出会ったのは、中学生のころ。場所は高校受験のために通いだした塾だった。
「ね、やっぱ蒼佑君、めっちゃかっこよくない?」
「分かる。ユーチャンの鳥さんにめっちゃそっくりじゃない」
「似てる~! 配信者したらバズりそう」
同じ中学の女子が騒いでいるのを見て、美晴は彼の存在に気が付いた。確かに、パッと見て、蒼佑はイケメンという単語が実に似合う涼やかな顔立ちをしている。
伏し目がちの目は鮮やかな鳶色で、美しい黒髪はいつもサラサラとエアコンの風に揺れている。少し袖の長いカーディガンが良く似合う、身長170センチくらいの細身のイケメンだ。
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