わたしのかみのこ

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「まったく『神の子』は固いな。男になるチャンスだろ」  わたしは、カートを押す手を再び止めた。  そっか、あそこにいるのは、あの子なのか。  『神の子』と呼ばれた彼は、神野康(じんのこう)という名前なのだが、あまりの天才ぶりに、生徒たちは名前の読み方を変えて、「かみのこ」と呼んでいるのだ。  彼はわたしに気付いていないが、実は地元で小学生二年生の彼と出会っている。その頃、すでに天才少年ぶりを発揮していた彼は、いまと同様『かみのこ』と呼ばれていた。そんな彼を当時小学五年生のわたしは思いっきりいじめたのだ。  わたしは物心つく前に両親を亡くし、父の弟の家で育った。叔父はおそらくわたしを仕方なく引き取ったのだろう。叔父家族がわたしに笑いかけることは皆無だったし、叔父家族同士もわたしのことでしょっちゅうケンカをしていたようだった。叔父の家に世話になるしかなかったわたしは、少しでも気に入られようと積極的に家事を手伝い、小学三年生になる頃には家事のほとんどをこなしていた。
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