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ひたすら家事に明け暮れ、少しでも暇があれば、大好きな絵を描くという毎日を送っていた。学校では授業中も含め、寝ているか、絵を描いているかで、勉強なんてまともにしなかった。当時の先生たちは家庭の事情を考慮して、基本的に軽く注意するくらいだったが、五年生のときの担任だけは熱心に指導をする先生で、当然のように宿題を「忘れてくる」わたしにとうとう鉄拳を下したのだった。
どういう経緯だったのかはわからないが、それを神野康少年は目撃していたようだった。
いつの間にかわたしの近くに寄ってきた彼は、わたしを見上げて言った。
「叩いても、頭がよくなるわけじゃないのに、あの先生は理不尽だと思う」
「は? なに?」
幼い子どもが突然小難しいことを言いだしたので、わたしは混乱してしまった。
「ぼくがおねえさんに勉強を教えてあげるよ」
わたしは目が点になってしまった。
どう見ても小学一年生か二年生にしか見えない子どもが、五年生のわたしに勉強を教えてあげるって?
「おねえさんでもわかるように、教えてあげるから、安心して」
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