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なんだか情けなくなって、思わずため息をついた。
美術室はあまり人が来る場所ではないが、廊下側はガラス窓になっており、通りがかる人がいればこちらが丸見えだ。幼稚な知花一派は、わたしたちをさらし者にするつもりなのだろう。
わたしは、どこか鍵が開いているところがないか、窓をひとつひとつ確かめ始めた。
美術室の鍵はわたしも持っていたが、スマホとともに掃除用具カートの中に置いており、そのカートは残念ながらいま廊下にある。
ひととおり、器材準備室につながるドアまで確認したが、開いているところはひとつもない。ついでに彼が体を隠せそうなものを探したが、キャンバスか画用紙しかなかった。
ふと神野康を見ると、彼は相変わらず床にあぐらをかいて、こちらを興味深そうに見ているだけだった。
「ここの生徒なら、脱出の方法思いつかないの?」
彼は表情を変えずに淡々と言った。
「どこも鍵が閉まっているなら、誰かが開けに来るのを待つしかないよ」
わたしは少しイラついて言った。
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