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「小学生の頃、おねえさんが猛烈に怒ったあと」
なんと彼は覚えていた。天才少年が忘れるわけがなかった。
「直接は謝ってないけど、あのあと、すごく上手なぼくの絵を描いて持ってきてくれたよね。これを持っていれば、ぼくがピンチのとき必ず助けに行くって言ってくれて」
確かにそんなこと言ったかも。
「おねえさんが中学校を卒業して姿が見えなくなったから、さすがにもう会わないだろうとは思っていたけど、御守り代わりにいつも持ってたんだ。そしたら、この高校に来て、助けてくれたよね。だから、おねえさんのことは信じてる」
わたしは急に気恥ずかしくなって、彼から視線を外して、廊下を見た。
するとちょうど、廊下を通りかかった男子生徒が中を覗き込み、パンツ一枚の神野康を見て笑った。
わたしは、来ていたTシャツを脱いで、神野康に投げつけた。
「それ着て」
「う、うん」
笑うだけ笑って立ち去ろうとしていた男子生徒は、わたしを見て、くぎ付けになった。色気のないスポーツブラ姿だが、高校生には効果があったらしい。
わたしは男子生徒がいる窓に近づいて、言った。
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