ひそやかな英雄

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明けた朝、俺はなんとなしにテレビをつけてみた。 『本日、4月2日の天気は……』 どうやら、4月1日は無事に過ぎたらしい。俺にしてみればようやく、だ。 携帯端末を見ると、彼女からのメッセージが入っていた。 15字程度の別れのメッセージだった。 「まあ良いか」と思い、俺は彼女の連絡先を削除した。 不思議なことに気分は軽かった。 その後、俺は3ヶ月ほどグダグダとした日々を送っていた。 そんなある日、ぼんやりとニュースを見ていた俺は、突如として思わず目を見開いた。 『国籍なき平和団体を名乗る組織が声明を出しました。  彼らによると、核兵器及び大量破壊兵器を即座に完全無力化する装置の開発に  成功したとのことです。開発責任者のA氏によると……』 とんでもないニュースが流れてきた。 世界情勢が大きく変わってしまうようなニュースだ。 いや、それより何より、核兵器を無力化する研究をしていたA氏の存在が俺を大いに驚かせた。 テレビに映し出されたそれは、例の4月1日に何度も出くわしたあのおっさんの姿だったのだ。 「えー……嘘だろ」 嘘ではなかった。 A氏の研究によって、各国の核兵器及び全ての武力は意味を為さないものになった。 国同士のいがみ合いは簡単に解消されるものではなかったが、 いつ勃発するかもわからない核戦争に人々が怯えることは無くなった。 それによって世界情勢は安定を取り戻し、人も金も物も隅々まで豊かに行き渡るようになった。 社会を取り巻いていた陰鬱な空気も、いつの間にか消えていた。 今では穏やかな活気に溢れている。
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