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マンションへ向かう車の中…
“なあ…紗羅?
夫婦って…何なんやろうな?…”
ハンドルを持つ父が
真っ直ぐと前を向きながら言う…
“母さんは
ああ言ったが…
父さんは…
別に…紗羅が嫌なら
このまま聖君と離婚して
帰ってきてもかまわないと思ってる…
聖君と話したくないなら…
話さなくても良いと思ってる…”
紗羅は
黙って父の言葉を聞いている
“『心の殺人』
って言うらしいわ…不倫の事…
父さんは…
母さんに…それだけの事をしたっちゅう事たいね…”
父の横顔は悲しそうだった…
“なんで…
あげな事に、なってしまったんか…
今でも考えるんよ…
今でも
よう覚えとる…
母さんが…家を捨てて東京の俺のボロアパートに来た日の事…
あんなに嬉しかったのに
なんで…
あんな事したんやろ…
そんな事…
考えても…悔やんでも…
どうにもならんのに…”
初めて聞く
父の言葉だった…
“笑われるかも知れんけど…
一生懸命やった…
母さんが笑うと嬉しかった…
ほんと…
ただ…笑ってるだけで嬉しかったんよ…
母さんが病院に入る前…
どんなに謝っても
母さんは許してはくれんかった…
酒もやめれんかった…
カウンセラーの先生に言ったんよ
『どんなに尽くしても妻はわかってくれません…
どんなに謝っても許してもらえません』ってな…
そしたら
その先生が
『不倫は心の殺人と言われてるんですよ』って…
『それたけ不倫をされた側は傷つくんです』ってな…
そん時
初めて…お父さんは自己満足だけでお母さんと接しとったんやなって気づかされたんよ…”
父が
絞り出すように
ポツリ…ポツリと話す
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