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僕は研究者としてはかなりのものだと思っている。
これまで世に送り出してきた研究、発明は数点しかないが、それでも社会の役に立っている。
それらの実績が僕の誇りであり、自慢だ。
今回の研究も同様だ。
上手くいけば世の中をより良いものへと変えてくれるにちがいない。
それを――今日は少しだけ私的なことに使わせてもらった。
深山(みやま)ミサキ君。
信頼できる助手だ。
ハッキリ言おう。
僕は彼女に好意を抱いている。
いつからこうした想いを抱くようになったのか、それは覚えていない。
助手としての有能さはもちろん、聡明さや奥ゆかしさが僕の好みに合っていた。
研究にも文句ひとつ言わず付き合ってくれる。
地味で退屈な作業にもかかわらず――だ。
おそらく彼女も僕に対して、少なからずそうした想いがあるにちがいない。
そうでなければ助手が務まるハズがないのだから。
ミサキ君には黙っていたが、薬はとっくに完成していた。
実用化に向けて調整が必要だ、と彼女に言ったのは本当だ。
だがその効果は――理論上――間違いないものである。
臨床試験というワケではないが、先ほど彼女に渡したお茶に薬を混ぜた。
彼女の――僕への好意を後押しするために。
あの子は研究熱心で生真面目だから。
僕に直接、”好きだ”と伝えるのは難しいにちがいない。
彼女はさっき、お茶を飲んだ。
その効果がどのように現れるのか……。
これからじっくり観察するとしよう。
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