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変態だなんて、決してそんな風に言われるようなことはしていない。抱きしめて、匂いを嗅いでいただけだ。
それなのにそんな言い草はひどい!って思うのに……反論なんて出来ない。耳元から離れ、目の前で余裕の表情を見せる蓮くんをただ見つめ返すのが精一杯だ。
身体のどこにも触れられていないのに、唇を寄せられていた耳がジンジンと熱を持つ。
激しく波打つ心臓は、私がどれだけ蓮くんを好きかを物語っている。
こんなに好きだっていうのに……翻弄されっぱなしで。蓮くんは私にドキドキしてくれたことなんて、きっとない。
悔しくて、切なくて……私が下唇をぐっと噛むと、その仕草に気づいたのか、はたまた気付いていないのか……
蓮くんはそれまでの意地悪な微笑みをにっこりと爽やかな笑顔に切り替えた。
「まあ……いいや。ぐしゃぐしゃでも洗えば一緒だし」
「え……?」
「夜遊びもいいけど、明日も仕事なんだから早く風呂入って寝ろよ?」
ポンポンと頭の上で掌をバウンドさせた蓮くん。
あまりの緩急に戸惑って立ち尽くす私の横をスッと通り抜けた蓮くんは真っ直ぐに玄関へと向かった。
え?!このまま、帰るの?!
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