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「ふふっ」
あの頃のように言い合っていると、不意に沙羅が小さく笑った。
「沙羅?」
どうしたんだろう、と波音と顔を見合せてから沙羅を見る。
「なんかこうしてると、高校生のときに戻ったみたい。桜と波音って本当に仲良かったよね。懐かしいなぁ」
「え、そ、そうかな」
急に恥ずかしさが込み上げる。
でもたしかに、波音のおかげでかなり元気が出た。
(あの頃も波音にはよく恋の愚痴を聞いてもらっていたなぁ……)
そういえば、波音は今恋人とかはいるのだろうか。指輪はないから、結婚はしていなさそうだけど。でも芸能人だし、彼女くらいはいそうだ。
「なぁ、今日このあと暇?」
「え? えっと、このあとは……」
(沙羅と飲みに行くつもりだったけど……)
「桜、久しぶりに飲み行かない?」
「おぉ! いいじゃん行ってきなよ!」
沙羅が代わりに答える。
(いや、勝手に!)
「行ってきなよって、それなら沙羅も行こうよ」
さすがに会ったばかりでふたりきりは厳しいし、という思いを込めて言うと、沙羅はまた顔の前で手を合わせた。
「ごめん! 桜たちが今日サシ飲みするっていうなら、今日は私も七木さんを食事に誘ってみたいな、なんて」
「あ、そ、そっか」
そういえばそのために来たんだった。
「あぁ七木な。今呼んでくるよ」
波音は事情を既に知っていたらしく、さっと立ち上がると控え室を出ていった。
波音がいなくなると、沙羅がさっと私に駆け寄ってきた。耳元で小さく囁く。
「ねね、波音、めっちゃイケメンになってたでしょ!」
「え、あ、そうだね」
もちろん高校時代から波音は女子から人気があったけれど、その辺は私はあまり記憶がない。
(当時はずっと真宙くんのことばかり追いかけてたからなぁ……)
甘いような、苦いような記憶が蘇り、苦笑いのようななんとも言えない表情になっていると。
「ねぇ、どうどう?」
「どうって?」
なにが。
眉を寄せて沙羅を見る。
「再会して、波音とラブの予感とか!」
「いやいや。私失恋したばっかなんだよ……?」
しかも、かなり大きな。
「だからこそでしょうよ!」
沙羅はなぜかテンションが高い。
(七木さんに会えるから嬉しくて興奮しているのかな?)
「それに、波音はもう雲の上の人だよ。私には全然手が届かないって」
「えぇ~そんなことないよ~!」
「そんなことあるって」
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