優しい悪夢

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「薬効かない?」 「うん……今日診察に行くから、薬の量増やしてもらえるか相談する」 心療内科で処方される睡眠薬は、はじめは弱い効き目のものからだったがひとみの不眠は改善せず、二度の変更を経て徐々に量が増えていた。 「……そうだね。仕事、辞めてもいいんだよ」 「大丈夫。慣れたらきっと良くなるから」 「でも。もう3か月になるだろ。見てるのもつらいよ」 昇格してから仕事量、責任、プレッシャーが倍増し、家に帰ってからも仕事のことが頭から離れなくなった。 寝床に入っても翌日のことを考えて眠れない日が徐々に増えていき、現在では気力だけで仕事をしている。 太い腕の中に囲い込まれた。 体の熱は既に引いて、朝陽の体温が心地良い。 ひとみが不眠になってから、朝陽は更に過保護になった。 医者である朝陽は多忙で、夜は遅く朝は早い。 連日明け方にホットフラッシュを起こし、朝陽を目覚めさせてしまうのに、彼はその度に飽きずに悲しい顔をする。
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