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『私ね、自殺したとき、たったひとりでもいいから誰かと繋がりたいって思ったの』
僕はハッとして顔をあげる。
そうすれば、今ならソラの姿が見えるような気がしたから。でも、誰の姿も見つけることはできなかった。僕には、悲しげに微笑むソラの顔が見えた気がした。僕をまっすぐ見つめている、永遠に重ならない視線。でも、僕たちは同じ境界線の端にいて、言葉を交わしあっている。
彼女が見えない理由も、ずっといられないことも、本当はとっくに気づいていた。それで
も、温かな感情を分かちあうのが久しぶりで、とても久しぶりすぎて、いつのまにか関係を手放せなくなっていた。この温かさを一度知ってしまったら、もうあとには戻れない。ソラと共有した景色は、あまりにも綺麗だったから。あまりにも綺麗でまぶしくて、その瞬間をずっと手に入れたいと望んだから。
「行かないでよ」
僕は虚空に手を伸ばす。
すぐそこにソラがいる気がする。僕と同じように弱くて、自分のことが嫌いで、同じようにひとりぼっちで、その孤独に耐えられなくて、死んでしまった女の子。
「君が消えたら、本当にすぐ死にたくなっちゃうよ」
『どうするかは、君の自由だよ。それは誰にも止められない。自殺が救いになるのなら、そ
れを目指して生きればいい。なんだか矛盾してるけど、それはよく分かるから』
いつか自分で死ねるから、この瞬間は生きられる。そう―― 僕もずっと、そう思っていた。
ソラはやっぱり「僕と同じ」だ。同じ感覚をずっと胸の底に抱きながら、ひとりで生きていたのだろう。自分で死ぬ間際まで。まっさかさまに落ちていく、青くて冷たい星のように。
「君と繋がれてよかったよ」
吐息をつくように僕は言う。
それは本当の気持ちだった。悲しくて仕方ないけれど、とてもやるせなくなるけれど、ソラと出会わなければ―― 今も、この世界の美しさの欠片にも気づけなかっただろう。そして毎日を呪いながら、惰性で生きていただろう。
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