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そして今日は4回目の外出で、ゴンドラ無し、最初から歩きで高尾山に登ったのだ。
行きは順調だった。
『靴、すごくいい感じ!
たくさん履いて選んだかいがあったよ。
ありがとうね。』
『それはよかった。
いいペースで上がってきてるな。』
じっくり選んだ靴は足に馴染んで、どこまでも行ける気がした。
途中の吊り橋では大した高さじゃないのに腰が引けた私を前に歩かせ、バカにしながらもピッタリと離れず後ろから付いてきてくれた。
背中に感じる遠藤くんの気配に体が火照ってしまった。
山頂に着いて、前回と同じところで足を止めた。
9月下旬の空気は乾いて温度が下がって、心地良い風になっている。
思い切り息を吸って吐き出すを何回か繰り返す。
体の中の何かが新しい空気に入れ替わる感じがした。
前の時より体も心も軽くなっていく。
今日の遠藤くんは離れずにずっと隣にいた。
視線を感じて気恥ずかしくて、前を見たまま
『気持ちいいね。』と言ってみた。
『ああ。
…いい顔するようになったな。』
遠藤くんはそう言って、ふっと微笑み、大きな手で私の頭をポンポンと撫でた。
お昼ご飯は軽くないと体が重くなるからと、お互いおにぎりを作ってくることにしていた。
『交換しようぜ。』
遠藤くんが私のおにぎりをスッと取って、自分のを私に持たせた。
突然の交換に、自分のおにぎりが恥ずかしくなって慌ててしまった。
…と慌てているうちにもう食べてる。
『わー!
私のおにぎり、口に合うかな?』
『なにこれ、シーチキンを鶏そぼろみたいに味付けたの?
超うまい!』
私が一番大好きな具を気に入ってもらえたようでほっとした。
遠藤くんのおにぎりはお気に入りの昆布の佃煮だと言っていた。
器用な三角の形のオニギリは遠藤くんみたいにしょっぱめで、美味しかった。
お昼休憩取ってもまだ時間はたっぷりあったので、帰り道の下りは少し時間のかかるコースにしてもらった。
下りだし、大丈夫だろうと思っていた。
なんとなく早く下りてしまうのはもったいない気がした。
最初は普通に歩けていた。
ところが1時間くらい歩いたら膝が痛くなり始め、我慢して歩いていたがとうとう辛すぎて座り込んでしまったのだった。
まさかこんなに急にダメージがくるとは思わなかった。
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