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『全部正直に言うよ。 引かれるかもしれねぇなぁ。』 空いている手でタオルを取り出し私の涙を拭きながら話し始めた。 『最初はただの同期だったけどさ、藤田が営業にきてからずっと好きだったよ。 不本意な異動に負けたくないって必死で仕事覚えてる姿を見て…まあ他にもあるけど…好きになったんだ。 どうこうするつもりはなかったよ。 彼氏に一途なところもいいところだから。 そのうち藤田が結婚でもしたら諦められると思ってた。 だけど柴山が結婚に踏み切らない彼氏と別れるきっかけになるように旦那の友達を紹介するって言うからさ。』 柴ちゃん、そんなことまで考えてくれてたんだ。 『他の男が出てくるくらいなら、俺がきっかけになってやると決心したんだ。 俺のきっかけになった柴山には感謝だわ。』 拭いてもらってもまた涙が出てしまう。 『俺が誰にでも優しいと思ってるみたいだけど、優しくするのは藤田だけだぞ。 それに同僚としてだったけど、一緒にいた時間は元彼に負けねぇぞ。 むしろ長いぞ。』 思い起こせば、そうかもしれない。 『彼女いると思ってたみたいだけど、片思いしてからは彼女はいねぇよ。』 またタオルで顔を拭かれる。 『頑張ったといっても、カッコつけてたわけじゃねぇな。 まあ、俺を知ってもらおうと思って。 強引に趣味に付き合わせてた感じだな。』 全力で首を振って否定した。 『そんなことない。 山登りも買い物もアクション映画もみんな楽しかったよ。 楽しかったから…困ってた。』 遠藤くんは眉毛を下げて笑い、また繋いだままの手の中指で鼻の頭を掻く。 『ハッキリ言わないままで悪かったよ。 俺もこんなの久しぶりだから…逃げ道を残しておきたかったんだよ。 かっこ悪りぃけど。』 遠藤くんもそんなふうに思うのか…。 それにそんなに前から思ってくれていたなんて…。 『ひでぇ顔だな。』 私の顔を見ながらふっと笑う。 『でもそんなとこも好きだよ。 化粧も気にせずに頑張るとか、気を遣わせないためにやたらには謝らないとか。』 どうしてそんなにわかってくれるの。 また涙が溢れてしまう。 遠藤くんはまたタオルで顔を拭いてくれてから繋いでいた手を離して聞いてきた。 『で、聞いてみてどうだった? 引いた? 返事はくれんの?』 私も自分の気持ちを認めていいのかな。 『引いてないよ。 嬉しい。 私もダメだと思いながらどんどん惹かれた。 でも…私でいいの?』 『まだそんなこと言うか。』 今度は私から手を握りにいった。 離れてしまいたくない。 涙で目が霞む。 『だって…私、オニギリ三角に握れない。 遠藤くんのは綺麗な三角だった。』 『ああ、あの丸っこいオニギリも藤田らしくてよかったよ。』 カカカと笑ってタオルを首に掛け、今度は両手を握られた。 『これからは一緒にやればいいだけじゃん。』 遠藤くんには敵わない。 『…うんうん。』 『前に仕事を頑張るとそこに居場所が出来るって言ってたな。 今日からは俺が藤田の居場所だ。』 『…うんうん。うんうん。 …ありがとう…。』 半分は擦れて声にならなかったけど、遠藤くんには伝わったようだ。 『ん』と言いながら手を引っ張って抱き寄せられ、泣き止むまでがっしりとした腕の中に包まれていた。
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