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ダメだ…。
『ごめん。
ちょっと膝がガクガクしちゃって…。』
どうにも足が前に出せなくなって、木の根元に座り込んだ。
ああもう、自分が情けない。
日帰りの高尾山なんて、全然大丈夫だと思っていた。
前回少し歩いてバテてしまったから、その後からは一駅分歩いて鍛えていたのに。
連れて来てくれた遠藤くんの足手纏いになって申し訳ないやら恥ずかしいやらで泣きそうになる。
でも泣く方がもっと迷惑。
しょんぼりしてるのも、迷惑。
なんとか堪えて、隣に座った遠藤くんに普通の感じで謝った。
『せっかく誘ってくれたのに、足手纏いになってごめんね。』
『そんなこと思ってねぇよ。
初心者誘ってるんだから、こんなの想定内だわ。』
ああ、やっぱり優しいな。
『でも帰り道の選択、ちょっと誤ったな。
もう少し緩やかな方へ行くべきだった。
悪いな。』
『ううん。
私がもう少し山道を楽しみたいと言ったから。
こんなに急に足がガタつくとは思ってなくて…。
本当ごめん。』
遠藤くんはふっと笑って、リュックのポケットを探りながら『じゃあお互いさまだな。』と言って、私の口にチョコレートを放り込んだ。
私は口をモゴモゴしながら頷いた。
遠藤くんの優しさみたいにチョコレートが体に元気をくれる。
『少し歩けるか?
とりあえず歩いたらまた休んで、を繰り返していこう。』
『うん、大丈夫!』
歩き始めながら、今日までの遠藤くんとのことを考えていた。
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