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「一時はどうなるかと思ったわい」
二人は平穏に河川敷に戻った。そして彼女が軽く話してる。
「はったりって通じるんだなー」
横で彼も笑ってた。
「随分嘘をついたねー。あの爆発、イチかバチかだってんでしょー?」
「魔法の使い方なんて知らないもん。爆発が起きてくれて良かったよ」
全くの嘘を語っていたみたい。
「それでー、疑問なんだけど。なぜ君は薬を渡さなかったの?」
確かにそうだ。彼が無事に戻るにはそれが一番の方法。でも彼はそれを実行しなかった。
「だって、お前が腹を括ってまで世界を守ろうとしたからさ」
今の彼はあの時の彼女の表情を思い出していた。
「んー? それは素敵なあたしに惚れたのかニャー?」
「どうだろうな。格好良いとは思ったよ」
クスッと笑う彼なので彼女もにこりとしたが「格好良いのはどっちだ」と彼に聞こえないように語る。
「さて、残りの薬も人手に渡らないようにしないとな」
もちろん彼が複製した薬はまだ有る。
「あれー? もう魔法が使えなくなっても良いのー?」
「空を飛びたくなったらお前に掴まるわ」
楽しそうな彼女の笑顔に彼も答えてた。
「その方が安全かもしれないねー」
彼女の言葉を聞いた彼は紙ごみを取り出して火をつけた。
そこに薬瓶から粒をくべる。煙が虹色に染まった。
やがて粒が弾けて花火のように弾け、綺麗な色で花を咲かせた。
「惜しくはないかな?」
夏なんて終わっているのに花火を眺めながらの彼女の言葉が有る。
「忘れたよ」
呟きみたいなのはもう聞こえなくて浮いてた。
おわり
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