守るからね

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 かなり軽く担当者は語っていた。 「俺って捕まっちゃうんですか?」  話していたのは彼のほうだったので驚いていたが「バカ」と小さく彼女が呟く。 「違います。問題は実験として一般人を無許可で利用していた。そして常習となると罪も重いのかと」 「ちょっと待て、俺は了解を得て実験台になってたんだ。それでも問題があるのか?」  なんと彼が嘘をついて彼女の味方をした。しかし担当者は更に渋い顔で「規定ですので」と返す。  重たい雰囲気になって「二人で話したいんですけど」と言うと「担当を呼びますので少しなら」なんて言い担当者はもっと権力のある人物を呼びに向かった。 「ヤバイことになったなー。でもしょうがないよねー。良いだけ利用したんだから」 「のんきに言うけど罪が重いって」 「うーん。でも、そんなにじゃないでしょ」  普通ならそうだ。実際規定違反程度だから。  しかし、次の担当はスーツを着込んだ四人ほどが取り囲む。 「あのー。あたしの罪はそこまで重いんで?」 「戦時下においては些細な事件でも厳罰とすることがある。君は重罪と判定された」  かなり威圧する話し方だ。 「どうしてそんなことになるんだ! 戦時下って、どういうことなんだよ」 「黙っておくべきだったんだけど、協会は今、魔法連合って組織と戦争してるんだ。だからちょっとゴタゴタしてるみたいで」  黒スーツたちは睨むだけで話さないので、彼女が説明を語った。しかし、これも間違い。 「一般人に魔法の世界の事情を明かさない。また罪が増えた。戦地送りになるか、若しくは死刑だ」  待っていたみたいに黒スーツたちがあんまりなことを言い始めた。 「そんなバカな話が有るかよ!」  もう完全に彼のほうは怒っていた。 「彼氏さんが心配しているな。一つ交換条件を付けよう」  これも黒スーツたちは待っていたみたいに彼女に向って話し始めた。もちろん二人は恋人ではない。 「魔法を使えるようになる薬と言うものと、その研究資料を全て軍部に渡しなさい。そうすれば今回の件に関しては不問としよう」  どうやら元々それが目的で彼女の罪を大きくしていたみたい。でも、彼女は黙っていた。 「まあ、考える時間も要るだろう。恋人と良く話しなさい」  もちろん小部屋に監視カメラが有るので逃げる心配なんてないのだろう。黒スーツたちは部屋から離れる。 「薬くらい直ぐに渡しちゃえば良かっただろ」  二人だけになって話している。彼はまださっきの怒りが覚めない様子。 「良く考えなさいよ。今は戦争をしてるの。そして軍が薬を欲しがる理由なんて一つしかないでしょ?」 「理由って、そんなの便利だからじゃないか?」 「そう。便利なんだ。あの薬は誰でも魔法が使えるようになる。そうしたら兵士を簡単に増員できるでしょ? 戦争が更に悪化する」  この薬を一般人に与えたら魔法が使えるようになる。そうなったら協会が有利になるだろう。そうなると相手の被害は甚大になる。彼女は協会ではなく魔法の世界の平和を考えていた。 「だけど、そんなことをゆってるとお前が罪に問われるんだぞ!」 「しょーがないのかも。あたしだけが犠牲になって人死にが増えないならそれも」  こんな時に彼女は笑っていた。 「さて、少しは話せたかな?」  恐らく二人の話は聞かれてたのだろう。黒スーツたちは部屋に戻った。 「薬は渡せません。研究記録も有りませんし、あたしは話しませんから」  彼女の言葉に黒スーツはため息をついていた。 「自白魔法だって、使えるんだからな」  これが最後の脅しになるだろう。それでも彼女は強い瞳を持って「お好きにどうぞ」と語る。 「君はどうかな? 彼女を救けたいと思わないか? 簡単なことだ。薬を渡したら良い」  次の目標として黒スーツは彼を目標に定めた。  すると彼は数粒の虹色に光る薬の入った袋を取り出した。 「それが薬かい? 彼のほうが話がわかるらしい。そうだ。渡しなさい」  にやついている顔が有る。  黒スーツは薬に手を伸ばした。  だがその手に薬は届かなかった。  彼は手を引いて薬を自分のほうに戻して、次の瞬間薬を口に放り込み飲んだ。 「これで薬は無くなった! お前らの悪だくみなんて通らない」  呆気にとらわれてしまうのは彼女と黒スーツたち。 「なんてことを。なら、自白魔法を使うだけだ!」  かなり脅している雰囲気が有るので自白魔法は恐ろしいのだと彼にもわかる。 「それも通じない。忘却魔法くらい知ってるんだからな」  彼はそう言うと彼女のあたまを掴んで念じる。両手が白く光って彼女を包んだ。 「あれっ? 本当に忘れた。へー、忘却魔法ってこんなのなんだ」  今まで使ったことはあるが使われたことなんてないので彼女はのんきに話してる。 「貴様ら! これがどんな状況なのか理解しているのか!」 「そんなの知らないね。そんなことより俺は今魔法の薬を大量摂取してるんだ。どれほどの力が有るのかわからない。それでもツベコベ言うのか?」  激昂する黒スーツを睨んで彼は壁に手を付いた。次の瞬間魔法の光は入り口のドアを包んで爆発してしまう。 「戦争だって? 知らねーよ。そんなの。なんなら今この場所を戦地にしようか?」  今の魔法を見た黒スーツは彼の睨みにひるんでしまう。それは彼の魔法が陣や呪文すらも使ってなかったから。魔法には方法が有る。それを無視しているのでどれ程の力が有るのかわからない。 「わかった。薬のことは忘れよう。そうすればおとなしくしてくれるのか?」  少し悩んだ様子だったが黒スーツは渋々話す。どうやら危険察知はできるみたい。  しかし、彼は返事をしないで彼女のほうを見た。 「ついでに今回の実験のことも不問にしてもらえるなら」  ニコッとしている彼女は図々しくも話すと「そのくらいどうでも良い」と黒スーツは苦々しく返していた。
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