守るからね

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 弱い魔法でも使えるなら普通の人間とは違う。一般社会で当然のように暮らしていてもそんな人も居る。もちろん知らない人のほうが普通の者となる。 「用事有るのか」  良く呼び出される男が聞いていた。彼は取り合えず普通の人間。 「ちょい待ちなってさー。もち、用事が有るから呼んだんだって」  高校生カップルのような二人が河川敷に座っていた。だけど、二人は恋人ではない。単なる友人。 「お前に呼び出されるとろくなことがないんだけどなー」 「んー? テス勉教えてもらったり、けんかの仲裁頼んだり、ハンバーガー奢ってもらったり、くらいで悪いことないでしょ?」 「普通に考えてろくなことばっかじゃないか」  くたりと伏せてしまった彼の肩をパンパンと布団を叩くみたいな彼女。もちろん笑顔だ。 「これもあげる!」  彼女が差し出したのは小瓶。 「薬瓶みたいだな。良いものなのか?」  その瓶の見た目は茶色でどこにでもある薬の瓶だ。 「だって薬だもん。飲んでみて!」 「はい、そうですか。では、いただきます。って言う人間が居ると思うのか?」 「聞いて驚け! これは魔法を使えるようになる薬だ!」  彼女は瓶から薬を取り出して彼に見せた。透明で虹色に光っているサプリメントのような薬。見た目はきれいだが、そう言われたとて飲む気にはなれない。 「わー、それは驚きだ。魔法で空を飛ぶのが僕の子供のころからの夢だったんだ。ありがとう」  彼の言葉に彼女はうんうんと頷いているが、彼の言葉は片言で明らかに冗談。 「とうとう勉強に疲れてぶっ壊れたか? だからもっと偏差値の低い高校にしとけってゆったろ」 「あたしはまともだい! 良いから飲んでみなって。あたしが嘘ゆったことある?」  虹色の薬を差し出しながら彼女が言う。彼は「うーん」と唸ってた。 「嘘なんて数えきれないくらいに聞いた。信じられるか!」 「なー。騙されたと思って飲んでみない? 夢の世界が待ってるよー」 「んな危ない薬を飲めるか。自分で試せよ」  河川敷のいつもの帰り道を歩きながらの会話。彼の言うほうが当然だろう。  でも彼は足音が聞こえなくなったので振り返った。一応無下に見捨てたりはできないから。  しかし、そこに彼女の姿はなかった。さっきまで直ぐ後ろを歩いていたのに。 「ちっとはあたしのことを信じなさい」
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