もう元には戻れない

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大好きだった兄貴と連絡が取れなくなり、兄貴の住んでいるアパートへ向かっていた。安物件だが駅も近く割といい立地で、俺も何回か来て遊んで帰った思い出の場所。 昼頃について見れば石塀の中にある古びたアパートで壁には蔦が這い、外壁なども剥がれかけているほどのボロボロっぷり。二階の奥が兄貴の家で俺は崩れ落ちそうな鉄骨の階段を上がり、兄貴の家のドアノブを回せば鍵が開いていた。 「兄貴ー?可愛い弟…が…」 扉を開ければ家の中は空っぽで、人が住んでいた形跡がほとんど無かった。俺は中へ入り辺りを見回すが兄貴の痕跡はほとんど無かったが、玄関の角に何か落ちていた。 拾えば黒い名刺に白い龍が描かれていて、赤字で黒龍館と書かれていてその後に劉香龍と名前が書かれていた。俺はスマホを出して検索してみれば、ホステスの店とわかった。営業時間がまだ先なので、俺はそれまで暇を潰してから黒龍館へと向かう事にした。 ネオン輝く夜の街は人通りも多く、様々な人が行き交う。その夜の街で黒龍館を探してみれば、短めのチャイナドレスの大人びた女性が客引きをしている。俺はこの人に聞けばわかるかと思い、客引きの女性に歩み寄った。 「你好お兄さん。寄ってく?」 「あ、いやこれ見て欲しくて」 俺はポケットにねじ込んでいた名刺を取り出してその女性に見せれば一瞬女性は目を細め、俺にぱっと笑顔を向けてきた。
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