もう元には戻れない

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ガバッと起きれば懐かしい兄貴の家の中で、兄貴は部屋の隅で裸で丸くなり壁にもたれて爪を噛んでいる。こんな兄貴残してあいつの元に戻るなんて出来ない…でも戻らないと兄貴にまた危害が加えられるかもしれねぇ。 「兄貴…帰ろう?」 「宙…宙俺の宙…!」 「うん。うん…ずっと兄貴の弟だよ…」 抱きしめてやれば必死に縋り付いてくるので俺は背中をあやすように撫でてやる。落ち着いた兄貴に着せる服を買いに行かないとと思ったが、俺も服を破られたのだと思い出し自分の姿を見れば別の服が着せられていて、兄貴用の服も畳んで置かれている。手を見れば指も手当をされていてホッとした自分が居た。 残り少ない金を使い俺は兄貴と田舎の実家へと帰り、両親に兄貴を預ければ母さんはショックを受けて倒れてしまった。だが東京にこんな兄貴一人置いておくわけにもいかないだろ… 父さんに俺も心配されたが俺は親不孝者ですみませんと言い残し走って逃げるように帰ってきた。ずっと居たら戻ってきたく無くなるのは目に見えてたし、そのままあそこに居たら両親まで毒牙にかかる危険があった。 店の前に戻ってきたのは気が付いてから二日後の昼になってしまいもちろん店は閉まっていた。夜より人通りは少なく、この辺りは本当に夜の街なんだなと実感してしまった。
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