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 今まで彼に同情して励ましてくれていた周囲の人間は、口々に非難した。彼の親族までも。  けれども、斎藤は今の彼女を愛しているし、早く結ばれたいという思いはどんどん強くなるばかりだった。  今の彼女と結婚することはできたが、それにより失った友人、信頼は計り知れないものがあった。  実家の親からも賛成してもらえない結婚は、やがて夫婦の関係を(むしば)み、夫婦仲は今、最悪になっているという。 「時薬ってのはな、単に哀しい出来事や楽しかった想い出をすっかり他人事にしてしまう”忘れ薬”ってことなんだよ。だから、そんなの飲んではだめだ」  斎藤の言葉に、恭介はふと今年の正月に奏子の実家で奏子の祖母と話したことを思い出す。
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