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6.
「さて、お客さん」
くすり屋はその場にただひとり残った恭介に声をかける。
「今もご説明した通り、兄が作った“時薬”はまがい物。しかし、我が家に代々伝わる正真正銘の“時ぐすり”の効果はそれとはまったく違います」
「違う? どう違うの?」
「時ぐすりは忘れ薬ではないことは言っておきましょう。ただ、その効果の出方はいろいろなんです」
くすり屋はじっと恭介の瞳をのぞき込む。
「絶対に飲んだことを後悔させません」
飲んでみないと効果はわからない、そんなものを飲めるものかと恭介は思う。
けれども、先ほどまでの軽妙だったくすり屋の、真摯な表情にその場を離れがたい気持ちもあった。
どうせ死ぬと決めてる身だ。この苦しみから一瞬でも解放してもらえるのなら……。
「一本、もらうよ」
恭介は誘惑に逆らえず、くすり屋に言う。
「ありがとうございます! ではこちらをどうぞ」
くすり屋は透明の液体が入った小さな小瓶を恭介に差し出す。
「いくら?」
「お代はいりません」
「えっ?」
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