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「もしどちらかが先に死んじゃっても、それまでに作った二人の想い出を支えにして、天国でまた会えるまで頑張って生きて行こうね」 「なんだよ。結婚したばかりなのに、縁起が悪いな」  恭介が不満気に言う。 「だって恭ちゃんはご両親が亡くなって、家族を持つこと、失うことに、とても臆病になってる気がするの。プロポーズまでもかなり待たされたしね」  奏子はふざけて責めるように言う。 「だから言っておきたかったの。私たちの愛は死でさえも分かつことはできないってことをね」 ――そうだ。悲しい別れになってしまったが、そんなことで僕達の幸せな記憶は消えやしない。    奏子と雛子の想い出は、僕が生き続ける限り心の中にあるのだ――  恭介は奏子の死後、傷つき苦悶に満ちた彼女の死に顔しか思い出せなかった。それが久しぶりに、あの優しい笑顔を思い浮かべることができた。
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