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ふと気づくと、恭介はベンチで眠っていたようだった。すでに夏祭りは終わり、どの屋台も店じまいを始めていた。
握ったままの空瓶を返しに行こうとしたが、くすり屋のあった場所は空き地になっていた。
「あの、隣のくすり屋さんは?」
隣のたこ焼き屋に聞いてみる。
「ああ、早じまいして帰って行ったよ。今日の役目は終わったとか言ってたな」
「そうですか」
「兄ちゃん、良かったら残り物のたこ焼き持って帰らねえかい? 余りものでさ、冷えかけてるからお代はいいや」
そう言って、たこ焼きをビニール袋に入れて渡してくれる。
「ありがとうございます」
恭介はその美味そうな匂いに、家族を失ってから初めて腹が減ったと感じたのだった。
<了>
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