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3.
時ぐすりはたとえであり、“悲しみや絶望は時間が解消してくれるのを待つしかない”という意味だ。
そんな薬があるわけないのは、重々承知していた。
その屋台は看板に”くすり屋”とあり、”惚れ薬”や”縁切り薬”など、ちょっと不思議な薬の名前が半紙に筆書きで書かれ貼られていた。
よく考えてみたら、今の時代にこんな風に薬を夜店で売っていいわけがない。
ということは、若い子向けの遊び半分のまじないみたいなものだろうか、と恭介は考えた。
屋台の上に並べられているのは小さなアンティーク風のガラスの小瓶で、惚れ薬はピンク、縁切り薬は深緑といかにもなカラーリングだ。
案の定、浴衣姿の十代後半の女の子が数人、屋台の前に陣取って品定めしていた。
「この惚れ薬って効くの?」
その中のひとりが単刀直入に聞いている。
「効くなら、榊先輩に飲ませちゃう!」
「わー、ずるい!」
「抜け駆け禁止!」
盛り上がる女の子たちの声に、若い男の声が重なる。
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