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2.
ぼんやりと虚空を見つめながら、記憶をかき混ぜる。
けれど、何も思い付かない。
ほんとうに物忘れがひどい。
今に始まったことじゃないけど。
まいったなぁ。
そうだ、直前の行動をなぞったら、思い出せるかも。
昨晩はご飯を食べたあとソファでゴロゴロして、寝る前にトイレに行った。
冷蔵庫の前で立ち止まって、ソファに寝転がって、ここまで収穫なし。
昨日と同じように、トイレに入ってみる。何も思い出せない。
忘れる程度なら、そんなに大事じゃなかったのかな?
気分転換に、家の外へ出る。
最寄りの公園までの道を、ぶらぶらと歩く。
途中の一軒家で、犬小屋で寝ている犬と目が合う。別に怖くはないけど、吠えるとうるさいから、サッと前を通り過ぎる。
ミヤおばあちゃんの家の前を通る。
すると縁側で、ミヤおばあちゃんが黒猫にご飯をあげていた。
そうだ、あのごはんをもらいに来るつもりだったんだ!
昨日もあの丸々と太ったボス猫に先を越されたから、今日こそはもう少し早く来て、独り占めしようとしたのに。
少し離れたところから「ニャ~ン」とアピールしたけど、おばあちゃんは耳が遠くて気づかない。代わりに、ボス猫からすごい目でにらまれた。
それにしても、おいしそう。
あーあ、逃した魚は大きいや。気分が落ち込むから、あんまり考えないようにしよう。そうか、昨日もそうやって、すっかり忘れちゃったんだっけ。
明日こそは、僕がごはんをもらうぞ。
もし覚えてたら、だけど。
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