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恋愛対象として広海ちゃんの気持ちには応えられないけれど、私が親友だと思っている気持ちを嬉しいと言ってくれた広海ちゃんの気持ちを考えるとどうしても胸が熱くなってしまう。
ふたりして抱き合いながら泣いていると「いい加減に離れろ」と小さな声が聞こえた。
勿論それを言ったのは知樹であって、その瞬間、広海ちゃんは私の体をやんわりと放して知樹をキッと睨みつけた。
「離れろなんて偉そうなこと言うんじゃないわよ! あんた何様?! 円佳っていう最高の女を嫁にした幸せ者のくせにあっさり欲望に負けて陰でこそこそとあくどいことしまくってさ」
「! あ……あくどいことって──」
「ははーん、図星ね。あーあー悪いことは出来ないものよね。いい加減どこの馬の骨と乳繰り合っていたのか白状しなさい!」
「ち、乳繰りって──何ふざけたこと言ってんだ!」
「ふざけていないわよ。今、認めたじゃない。欲望に負けて陰でこそこそあくどいことをしていたって」
「そ、それは──」
その瞬間、知樹と目が合った。知樹の顔は明らかに真っ青で、どこからどう見ても悪いことをしているのだという事実が漂っていた。
「知樹……やっぱり──」
「っ、すまない! 円佳にあれだけ大丈夫と言っていたくせに……やっぱり我慢出来なくてつい──」
「そんな……いくら我慢出来なかったって……浮気をするぐらいなら私が色んな方法で知樹を満足させたのに!」
「……は? 浮気? 浮気って……先刻もなんかそんなことを言っていたが一体」
「だから知樹、私と出来ないから外で他の女の人と──」
そこまで言うと何を言っているのか察した知樹はいきなり真っ赤になった。
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