act.3

2/6
190人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「おまえ……まだ円佳のことを諦めていなかったのか。本当、執念深い女だな!」 「そんなの当たり前でしょう! っていうか一生涯諦めるつもりなんかないわよ! バーカ!」 (……あ、あれ?) ふたりの会話を聞いていて、なんだか思っていたのとちょっと違うんじゃないかと思い始めた。 ふたりの会話はまるで好きな子を取り合っているような……そんな会話にしか聞こえない。 (ま……まさか、ね?) しかしそのまさか──だった。 「円佳は知らなかったでしょうけど、わたしと知樹で円佳を取り合っていたのよ」 「……え」 「こいつ、同性愛者だよ。つまり円佳のことは恋愛の対象としてみていたんだ」 「……噓」 初めて知った真実。 知樹と広海ちゃんの関係が私を挟んでそういうものだったと──今、初めて知った。 「隠していてごめんね、円佳」 「……」 「でもわたし、本気で円佳のことが好き。好き、だけど円佳が選んだのは知樹だから……円佳の幸せが最優先だからわたしは円佳を諦めた」 「……」 「ごめん……気持ち悪いよね。恋愛対象として接していただなんて……」 徐々に小さくなる広海ちゃんの声に何度も首を横に振った。 「ううん、気持ち悪くなんかないよ! 広海ちゃんは広海ちゃんだよ!」 「!」 「私の方こそごめん! 広海ちゃんの気持ち、全然知らなくて。勝手に親友だって思ってて……」 「そんな……なに言ってんの! わたし、円佳に親友だって言われてめちゃくちゃ嬉しいんだからね!」 「……え」 「恋人にはなれなかったけど親友だって……そんな特別な称号をわたしにくれた円佳はわたしの──わたしにとっては最愛の人だよ」 「……広海、ちゃん」 広海ちゃんの言葉にボロボロと涙が零れて仕方がなかった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!