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「な、な、なに言ってんだ! 誤解だ! 円佳がいるのに、そ、そ、そんなことするはずがないだろう!」
「じゃあ、あの夜は何だったのよ!」
誤魔化されていると思った瞬間思わず声を荒げてしまった。
「あの夜?」
「そう! いつだったかお風呂に入った後のようなボディーソープの匂いをさせて帰って来たことがあるでしょう!」
「───あ」
知樹は思い当たることがあるのかハッとした表情を浮かべた。そして何か合点がいったのか、静かに事の真相を話し始めた。
「まず先に、俺が言っている我慢出来なかったというのは……スイーツの方だ。円佳には我慢出来る、大丈夫だと言ったが……やはりどうにも我慢出来なくなって仕事帰りに甘い物を食べ歩くようになった」
「……え」
「そしてあの夜、立ち寄った店の店員の不手際で頭から特大ジャンボパフェを零され銭湯に連れて行かれ服もクリーニングしてもらっていて……それで遅くなった」
知樹は目をあちこち彷徨わせながらそう淡々と語った。
(特大ジャンボパフェ……銭湯……クリーニング……)
そこまで訊けばもう全てが理解出来た。遅く帰宅するようになった訳も、そしてあの日の夜のことも──
「あれは円佳を欺いていた罰だったのだと思ったらまともに円佳の顔が見れなくてつい、避けるような感じになってしまったが……だが! だが俺は断じて浮気なんて……円佳以外の女と浮気なんて──」
「……うん、分かった」
「!」
隠れて悪いことをしているという自覚があったからこそ私と目を合わせることが出来なかったのだと知った。
しかも性的な欲望よりもスイーツに対しての欲望の方が勝るだなんて知樹らしいなと思ってしまった。
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