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人為同調『AS』
二人の名前は『紅葉(もみじ)』と『楓(かえで)』。
彼女たちの両親は紅葉葉楓の花言葉『非凡な才能』に習って双子の名前をつけた。自分たちの子が偉大なる才能を持っているようにと願ってつけたのだ。
だが、その願いが叶う事はなかった。
二人とも、テストの点はいつも50点。芸術やスポーツも先生からの評価は毎回『B』。何をしても並レベルでしか行うことができず、突出した才能は皆無だった。
無理もない。彼女たちの親は平凡だったのだ。平凡な才能を持つ親から非凡な才能を持つ子供が生まれるのは稀だ。だが、彼らは自分たちが平凡であることを認めたくなかった。だから彼女たちに暴言を吐き、ついには暴力を振るうようになっていった。
しかし、彼女たちは決して平凡な才能の持ち主ではなかったのだ。
テストでは、二人の丸のつく場所は真反対で、足し合わせれば100点になる。
スポーツも二人が組んだダブルスは誰にも負けなかった。芸術も二人が共同制作したものは高く評価されがちだった。
紅葉と楓、二人合わせれば『非凡な才能』だったのだ。
だが、平凡な両親は二人の才能に気づく事はなく、暴力を振るい続けた。
どうにかして自分たちの才能を証明しなければいけない。そう思っていた紅葉と楓は名案を思いついた。
二人で教えあって勉強すれば二人ともテストで100点を取れるのではないだろうか。
思い立った二人は部屋に篭り、二人での勉強生活を始めた。
結果は大成功。先生からもらったテスト用紙には『100』という文字が刻まれていた。
二人は顔を見合わせ微笑み合うと、下校を告げるチャイムを楽しみに待った。
チャイムが鳴り、二人揃ってテスト用紙を両手で持ちながら一目散に家に帰る。
これでようやく両親に褒めてもらえる。自分たちの子には才能があったのだと喜んでもらえるに違いない。
だが、その願いが叶う事はなかった。
家に帰った時、彼女たちの視界に映ったのは『血塗れになった両親の姿』だった。
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