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「あれ……?」
少女はいつもの夜空とは違うことに気付く。北の方に、夜の闇よりも暗い煙が立ち昇っているのが見えた。その煙はまるで柱のように太く、空高く昇っていく。
「ねえ、あれ何かな?」
少女は少し前を歩いていく友達に声をかける。その声は微かに震えていた。全員が夜空を見上げ、そして煙を見て察してしまう。同じ空の下で今起きている悲劇をーーー。
同時刻、街の一角は喧騒に包まれていた。大きなサイレンが鳴り響き、野次馬が集まっている。彼らの視線の先には、炎に包まれたアパートがあった。
築何十年もあるであろう古いアパートは外壁などが一瞬にして崩れ、瓦礫の山となっていく。辺りには物が燃えていく時の独特の臭いが漂い、火花が宙を舞い、漆黒の空をさらに焦がしていく。
「こんな日に火事?怖いわね……」
「何が原因なんだろう?放火?」
「ここに住んでる人、これから大変だね」
「近隣の建物に燃え移らないといいけど……」
野次馬たちが話す前では、消防隊員たちが必死に消火活動を行っている。しかし、火の勢いは思っているよりも早く、炎が消えていく気配はない。
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