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少女は小枝のように細い手足を動かして自分で歩いているものの、煙を吸い込んでしまっている可能性もある。少女の容体が変わらないか救急救命士は観察しながら、彼女に質問をした。
「お嬢ちゃん。お名前はなんて言うのかな?」
「鬼頭翡翠」
自身の名前を口にした少女の声は、子どもの口から発せられたとは思えないほど玲瓏で、そしてどこか冷たいものだった。何故か救急救命士の体に寒気が走る。しかし、救急救命士は何事もなかったかのように質問を続けた。
「翡翠ちゃんね。翡翠ちゃんは何月何日生まれなのかな?」
「五月十三日」
「五月生まれなのか〜。そっかそっか。翡翠ちゃんはいくつなのかな?」
「十二歳」
少女の口にした年齢に救急救命士は驚き、彼女を必要以上に見つめてしまう。自分で自分の顔が今、驚きで満ちていることを救急救命士はわかったほど驚愕していた。
痩せ細った少女の背丈は、小学校低学年とほとんど変わらない。そのため、救急救命士は彼女が小学二年生ほどだと思っていた。
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