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「そ、そっか。十二歳か〜。じゃあ今年修学旅行があるね。楽しみだね」
救急救命士はわざと明るい声を出しながら言い、何かあったら呼んでほしいと少女に続けて言った後、救急車から離れていく。少し離れた場所で彼は警察官と話していた。
周りから大人が離れた。その瞬間を待っていたかのように、少女は自分で自分を強く抱き締める。そして大きく息を吐いた後、優しい声で言った。
「もう大丈夫。翡翠を傷付けていたあいつらはもういない。私たちがあなたを守る。絶対に」
真夏の夜、とあるアパートの火災が発生した。この火事で犠牲となったのは二人。少女の両親である。
しかし、彼女の目からは涙の一滴すら零れ落ちることはなかった。
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