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 四十八の子供と一名の大人、そして地蔵を乗せた船は、ぷかりと川を渡る。見渡す限り青い空が続いており、撫でる風が心地よい。  船着き場では、奪衣婆(だつえば)が、苦みが走った表情を浮かべている。 「遅いよ。何やってるんだい」 「すみません。鬼たちがなかなか離してくれなかったもので」  奪衣婆はぶつぶつと文句を言いながらも、慣れた手つきで橋渡し用の板を船にかけた。  その言葉に急き立てられるように、私は順番に子供たちを降ろしていく。一人、二人と地面に降り立つ度に、名簿に書かれた名前に赤線を入れる。その瞬間、子供たちは此岸から彼岸へ旅立つ。あっと言う間に、残るはアカネ一人になった。 「頑張ってください」と、私は右手を差し出した。彼女も私の手を強く握り返したその瞬間、アカネは私の身体を強く突き飛ばした。そして彼女も、引き込まれるように三途の川へと落ちていった。 「何してんだい。早く追っかけるんだよ」  奪衣婆の怒鳴り声があっという間に小さくなる。私とアカネは手を繋いだまま、濁流に身を任せることにした。 「というか、地蔵っちって浮くんだね」 「石じゃなくて木で出来ているんで」 「木とか、めっちゃウケる」  アカネは悪戯が成功した子供のようにケラケラと笑っている。いや、悪戯にしては壮大過ぎるか。
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