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久瑠実が再び僕に向かって「ごめんね」と頭を下げる。
僕は笑顔を作って首を横に振った。
「先生、ありがとうございました」
「では、お大事に」
先生が病室から出て行くと、久瑠実がベッドの上で起き上がろうとする。
「いいから寝てなよ」
布団の上から押さえつけ、そのまま久瑠実のおでこに手をやった。熱はない。貧血なのだから熱なんてないのだろうけど、風邪をひいた時に、母に手を当ててもらうと少し嬉しくて安心できた。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
うなずく久瑠実。
その顔はいつもにも増して蒼白で、僕はおでこに置いた手をずらして頭を撫でた。
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