第一話 望月 麻美

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第一話 望月 麻美

 マンションの壁を形成する石膏ボードは思いのほか脆く、ドカッ、という音と共に大きな穴が開いた。  苛立ち紛れに蹴飛ばして、すぐにひどく後悔をした。  業者に頼むといったいいくらかかるのか。自分で直すにしても、この色褪せた壁紙を新しいものと合わせるのはおそらくとても難しい。  そうだ! この際部屋ごとリフォームしてやろう。最高にオシャレな壁紙を買ってきて、床もピカピカに磨き上げ、家具もかわいいものだけにして。自分だけのお気に入りの部屋に。  早速インテリアショップやホームセンターをはしごして五軒目、ついに見つけた。ああ、これだ、絶対にこれがいい! 淡い麦わら色の壁紙、和紙の線維が表面になだらかな凹凸を不規則に作っている。穴も修復材でなんとか埋めた。  今日は早く帰って、一気に全部張り替えてやる! と意気込んでいたのだが。
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