第五話 麻美

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 この女を選んだのは選択ミスだった。世の中のほとんどが当たりくじばかりのはずなのに、俺は貧乏くじを引いてしまった、そんな顔をしていた。  それでも、やる気のないあいつを導いてタイミング療法を何度も試みて、でもやっぱりダメで。忙しいと言って取り合わないあいつの精子を凍結保存し、一人で人工授精を繰り返した。  体外受精をして胚移植をしてもダメだったことを伝えた時には、あいつはもう私のことを厄介者としか見ていなかった。  胚ができたのだから精子には受精能力があるということになる。そして、その胚を子宮に移植したのにダメだったということは、問題はやはり女側にある、そう思ったのだろう。
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