19人が本棚に入れています
本棚に追加
「庵野さん、またダメだったのよ」
心の中で、マジか……、と一人落胆し、もうこのまま帰りたい、と思ったのだがそうもいかず裕子さんの隣に座った。
「体外受精までやって、それでもできないってことは、きっと何かあるのよね」
「まだ二十代なんだし、元々そういう体質なのかも」
「だったらこれ以上やってもね」
「不妊治療ってすごくお金かかるんでしょ? 今までいったいどれくらい使ったんだろ? きっと結構な金額よね? それが全部パーってことか」
「そうよね。ホント、かわいそう」
視線を少し落として、曖昧にうなずきながら聞いていたのだが、突然裕子さんに問いかけられた。
「ねえ、そう思わない?」
皆の会話を聞く程に嫌悪感が高まってきて、でもあらためて問われると自分が考えていたことと同じ内容であることに気が付いて、愕然とした。
「そう、ですね」
私も同じように話のネタにされていた。
なんだか少し吐きそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!