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第六話 庵野
「そうなんですか。残念でしたね……」
野菜の配達にやってきた松島君に、二回目の胚移植の結果を伝えると、そう気遣ってくれた。
彼はまだ二十歳そこそこのいわゆるイケメンで、よく建物の裏側でタバコを吸いながら無駄話をする間柄だったのだが、僕が禁煙してからは、ここでタバコを吸わないようにしてくれている。
「うん。まあでも今回は体外でだけど受精はできたわけで。僕の精子が原因で妊娠できないってわけじゃないから人工授精の時よりは少し気が楽なんだ」
心配してくれている松島君に少し強がって見せた。
「へー、そうなんですね。だったらよかった。あっ、でも、その体外受精の仕組みはよくわかんないっすけど、そんな状況なら奥さんの方が落ち込んじゃってるんじゃないんすか?」
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