第一話 望月 麻美

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「ねえ看護師さん」  太腿の付け根の骨が傷んでしまうペルテス病、その男の子の手術説明を桜井先生から受けたお母さんに袖を引っ張られた。 「本当に大丈夫なんですか? 麻酔からちゃんと覚めるんですか? 移植した血管が詰まったらどうなるんですか? 手術中にバイキンが入ったら? 検索をしたら他にもっと簡単な手術方も載っていたんですけど――」  医師から説明を受けたこと全てについて、スタッフに聞き直す。この手の親は子供以上に扱いが難しい。  安易に大丈夫ですよ、と言うことはできない。医療訴訟に備えて、起こり得る全てのリスクを説明し、それを納得の上で承諾書をもらわなければいけないからだ。 「危険性については可能性がとても低いことも説明しなくてはならないから……。手術の方法は先生が最も適したものを選択されたのだと思いますよ」  断言することを避け返答を試みる。
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