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第二章
カナタは落ち着いた様子で刀を鞘に収め、甲冑の戦士に返そうとした。
「いいえ。私は聖人になりたいんです。このような剣など私には不要です。」
戦士は白銀の仮面で覆われた顔をカナタの方へ向けたかと思われたが、頭はもげてしまった。カラカラと音を立てて、仮面は転げた。そして甲冑はバラバラと分散した。なんと、甲冑の中はもぬけの空だったのだ。でも、さきほど確かに声を聞いたのに…。カナタは慌てて刀をその身に抱えたまま、甲冑が転がってしまわないようにかき集めた。
そして一人、旅の人が、目深に頬被りをしてマントを身に着けた御人がカナタを手伝って、甲冑をかき集めた。
「さ、これをお使いなさい。」
その御人は風呂敷を拡げ、甲冑の部品、仮面やら、腕、足、胴体などなどの部分をくるんでしまった。そしてそれをカナタに背負わせた。泥棒たちは少し離れたところからその様子を眺めていた。あのように光り輝く白銀の甲冑にいかほどの価値があるものか値踏みをしていた。
「さ、行きましょう。」
御人はカナタの背中を押して、城下町を進んで行った。
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