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「相手が魔力があることに気づけず油断しておりました、申し訳ありません」
「魔力を封じるロープで結びましたからこれで大丈夫です」
二人は申し訳なさそうな顔をして私たちに謝罪をした。
「彼の狙いはセレンだから私とセレンは先に帰るよ。今は気を失っているけど、目を覚ませばまた抵抗する恐れもある」
レインは私をまだ左腕に抱いたまま言った。
「君たちは騎士団が到着するまでここで彼を見張っていて。二人は怪我もしているから……カーティス、二人の治療をしてくれる?――カーティスの怪我は問題なさそうだね」
「ええ、少し擦ったくらいです。ではお二人は急いでお帰りください」
カーティスも笑顔を作ってくれる。その顔はあちこち血が滲んでいるが、大きなケガはないらしい。
副所長がうめき声を上げている。魔力を封じているとはいえ目覚めたら厄介なことに変わりはない。
「セレン、行こう」
レインは私の手を取って走り出した。
「ねえ、レイン!こんなに私に触って大丈夫なの!?」
走りながら私は質問する。
「緊急事態だから!それにきっと……大丈夫だよ!とにかく今は帰ろう!」
さっき砂の風から私の頭を守ってくれた手の甲は擦り傷がたくさんだ。その手がしっかり私を握ってくれている。私はとにかく走るしかなかった。
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