00 異世界レスられ妻、誕生

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00 異世界レスられ妻、誕生

   柔らかい光がまぶたを刺して、あまりの眩しさに目を開けた。  ああ、朝だ。なんだか長い悪夢を見ていたような気がする。  目を開けると違和感。やけに天井は高く開放感のある部屋だ。目を擦りながらふかふかのベッドから身体を起こすが、ええとどこだっけここは。知らない部屋だ。  もそもそと立ちあがり、部屋をうろついてみる。  ロイヤルブルーのドレープカーテンは締め切られているけれど、外の光がたっぷり漏れてきて明るい。全体的にブルーを基調とした部屋だ。  鏡台の前まで移動して、私は鏡の中の自分を二度見した。  ――誰だ、これは。  鏡にうつっているのは、サラッサラでストレートな銀髪の美人だった。  日本人にはありえない髪色の瞳の色をしている。  いや、違う。こちらが現実だ。  日本人だったのは悪夢の中で――いやそれも違う、悪夢なんかじゃない。あれは私の前世だ。  今の私は香坂冬子ではなくて、セレン・フォーウッドだ。  でもこの部屋はどこだっけ?冬子の部屋でもセレンの部屋でもない。  前世を思い出したからか、記憶が混濁している。  すると、控えめなノックが響いた。 「奥様、お目覚めでしょうか?入ってもよろしいでしょうか?」  ……奥様?  その言葉で、私はしっかりと目が覚めた。同時にはっきりと全てを思い出す。  そうだ!私は昨日結婚したんだ!そう、昨日は結婚式だった!  後ろを振り向くけれど、ベッドには誰もいない。誰かがいた形跡もない。昨日は初夜だったというのに。 「こ、こんなに美しいのに……」  鏡台にうつっている私は、自分でもぞっとするくらい美しい。 「こんなに美しいのに、転生先でもレスられてる――!」
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