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開発中でいくつも試作品ができたから、私たちは緊急事態用だけでなく他の色を連絡手段として使っている。呼び鈴のように用があれば卵を握り、ピンクが光れば使用人が自室まで来てくれたり。
自室で開発に集中している時に黄色が光れば「夕食ですよ」の合図だったり。我が家ではうまく活用している。
前世の知識も総動員して考えてみる。光だけじゃなく、通話ができる簡易トランシーバーみたいなものにならないかと考えているけれど。
どう考えても元々の防犯ブザー機能ではなく、自分が家で使いやすい便利機能を作ってしまっている!
苦笑して今日はここまでにするかと時計を見上げると「リスターさん、旦那様が待っていらっしゃるわよ」と窓を眺めた女性職員が声をかけてくれた。
そして、もう一つ変わったことは。レインが迎えに来るのが当たり前になった。
「護衛もいるから大丈夫なのに」と言うけど「私がセレンと少しでもいたいんだ」とさらっと返されてしまった。
「セレン、お疲れ様」
職場から出てすぐ、街路樹の前でいつも彼は待っている。サラサラした彼の白髪と小さく振ってくれる手が見えると自然と歩みが早くなる。
「そんなに急がなくても、今来たところだよ」
「うん」
私が一秒でも早くレインの元に到着したかっただけだ。レインが小さくこぼす笑みを見ると胸に小さな甘さが込み上げる。
「行こうか」
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