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手を繋ぐのは当たり前になった。もう手袋越しでもない。
「今日はあっちの通りに行ってみましょう」
「そうだね、美味しい食堂もあるよ。夕食はそこでどう?」
「ええ、そうしましょう」
私たちは週に一度、仕事帰りに寄り道をすることにした。
城下町の雑貨屋を覗いてみたり、書店で大量に購入したり、素敵な花があれば連れて帰った。そうして最後には外で食事をした。
――先日、私が軽く言ったことを実践してくれているのだ。
「私はセレンを抱きしめることができないかわりに、セレンの望むことはなんでもしてあげたいんだ。何か希望はない?」
恥ずかしいことを真面目な顔をしてレインは言った。
「ええと……そうね。いつもよくしてくれるから思いつかないわ」
「でも、私たち恋人になっただろう?恋人にしてほしいこととかない?」
とっくの昔に夫婦だというのに、恋人という響きが可愛くて愛しい。
そして想いが繋がっているのだと実感できて嬉しい。私はレインの恋人になったんだ、響きが私を甘くくすぐる。
「それなら……家から一緒に出掛けるんじゃなくて、待ち合わせして出かけたいわ」
なんとかひねり出した答えだけど、レインは嬉しそうな笑顔をくれる。そしてまずは仕事帰りから始めようと時間を作ってくれるようになった。
レインからの気持ちは十分伝わっていて、不安になったことも不満に思ったこともないのに。心に隙間はないから、レインへの気持ちがどんどん溢れていくことになった。
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