20 恋人になった夫婦

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「次の休暇はもう決戦の日ですし、今日はゆっくりしていただいて。スキンシップ治療に挑戦せずともダンスの練習を続けるだけでいいかもしれませんね」  ボディコンタクトがあった方が美しく踊れることは確かだが無理しなくていいのも事実だ。カーティスの言葉に賛成しようとするが、レインは小さく首を振った。 「いや、挑戦したい。少しでもセレンに触れられるようになりたいんだ」  レインの声は固く緊張しているから心配してしまうが、カーティスは満面の笑みになる。 「いやあ、お二人の心の距離が近づいているようで嬉しいです。レイン様にこんな日が来るなんて思っていませんでしたから」  カーティスの言葉を否定せず微笑んでいるレインに少しだけ嬉しくなる。レインが頑張ってくれるなら、私も応えたい。  完璧なダンスにしたい、ではなく、少しでも触れられるようになりたい、と言ってくれたことを噛みしめる。 「では目標達成している部分から始めましょうか。ホールドを組んでください」  カーティスの言葉に私たちは向かい合わせに立った。  レインが左手を私に差しだして、その手を私が取るとゆっくりとレインが自分のもとに招いてくれる。私の肩甲骨のあたりにレインの右手がそっと乗せられて、私がレインの右腕に手を添わせた。
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